訪問介護が危ない!2024年介護保険制度改正で要介護2以下は総合事業へ!?

2022.10.17掲載
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こんにちは。大阪介護転職ネットです!

要介護2以下の訪問介護・通所介護を総合事業に移行しようという提言が、財政審議会から政府に提出されました。

参照URL:
要介護2以下の訪問・通所介護は総合事業に 財政審、財政健全化への提言を政府へ提出(第3224号) | 株式会社官庁通信社 (kancho-t.com)

この提言がもし通ってしまった場合、正直、在宅福祉は崩壊してしまうのではないかと、暗澹たる気持ちになった筆者は、知り合いの地域包括支援センター長をしているTさんにお話を伺いました。

 

 

今回この問題に関して取材させていただいた包括センター長のTさんとは、以下のプロフィールをお持ちです。

『福祉業界歴は30年以上になります。特別養護老人ホーム、デイサービスで17年間、介護福祉士、ケアマネジャーを経験し、 地域包括支援センターで社会福祉士として相談業務に携わりました。 その後、地域包括支援センター長も務めました。講演活動なども行っています。職業柄当然多くの場面で介護福祉職の皆さんと関わることが多く、ケースによりとても長いお付き合いになることもあります。』

 

Tさんには現場の最前線で働いている立場から語っていただきました。

また、このテーマについては、


「『冗談はほどほどにね?』2024年介護保険制度改正へ向けての財務省のふざけた提言案」

の中の一つとしてご紹介しています。ぜひご覧になってみてください。これらのテーマに関して、介護職の皆さんからの注目度がとても高いということを実感しています。

以下Tさんのお話です。

『5つの提言を私も大いに気にかけて来ました。中でも、一番注目していたテーマ、「要介護2以下の訪問介護、通所介護を総合事業に移行する」という話を具体的に進めるという動きが出ています。

財政健全化の方策を話し合う財務省の審議会で、5月25に日政府への提言「歴史の転換点における財政運営」がまとまったということです。

財務省の主張は以下の通りです。

「要介護1・2の高齢者に対する訪問介護、通所介護について、要支援と同様に市町村の総合事業へ移すべきで、例えば、ボランティアを主体にするなど、地域の実情に応じた多様な人材配置、報酬の下でサービスを運営できるスキームへ切り替えることで、給付費の抑制につなげるべき。全国一律の基準ではなく、多様な資源の活用を可能とすることが効率的である」

以上がこれまで数年にわたって提言されてきた財務省の主張です。

特に現在、総合事業への移行の対象として、介護ホームヘルパーの生活援助が挙げられています。

これが実現してしまうと、由々しき事態になります。在宅介護は危機的な状況になるでしょう。現場にいるとひしひしと感じます。

職場の仲間や同業他者の人たちとも話しますが、言っても無駄とか、言っても何も変わらないと思っている人が多いのですが、私個人は、それらは現場の人間が考えるべきことではなく、行政が論じてくれればいいと思っています。

私は現場で同じような思いを持っているたくさんの人たちを知っていますが、取るべき行動は、泣き寝入りしてしまうことではなく、現場の声を上へ上へと挙げることだと常々思っていますし、伝えています。

なぜならお偉いさんの人たちは、現場を知らないから上記のような全くもって非現実な提言をして実行に移そうとしていると感じるからです。

今回の提言、「要介護2位以下の訪問介護、通所介護を総合事業へ移行」という提言が出された背景には、現場を知らない人たちの「無理解」があると思います。

その「無理解」とは、単刀直入に言うと、「誰にでもできる仕事だから、適当な人に低単価でやってもらっても十分成り立つのではないか」という、誤った認識です。この誤った認識、無理解の矢面に立たされているのが、訪問介護の生活支援です。

在宅介護に関してわかりやすくお話をします。

生活援助というのは、主に掃除、洗濯、買い物といった家事、生活の支援をしているヘルパーさんの仕事です。

ここで耳にしたことがあるのが、「生活支援なんて家事手伝いってことでしょ?誰にでもできるんじゃ?低額の有償ボランティアなどを使えば?」という、現場を知らないお偉いさんの全くもって誤った認識に基づく、無理解な意見です。

そういう人にはよく、「ぜひ現場を見に来てください、ついでに一日体験ヘルパーをしてみませんか?」とご招待します(笑)

まず、生活支援なんて誰にでもできるだろうということが間違った考えです。

ヘルパーさんの仕事は、かなりの専門性が必要です。訪問介護とは、見ず知らずの赤の他人(ヘルパー)を自宅に入れるわけです。

認知症や精神疾患を持っておられる方の中には、ヘルパーさんに対して、「お金を取った!」などの被害妄想を抱く人もいます。

気持ちの若い高齢者さんにセクハラされることだってあるんです。

お金を払っているのだからもっとしっかりやれ!と上から目線の人もいます。自分の家で家事をやるのとは大違いなんです。

また、こんな例もあります。新型コロナウイルス感染症の影響もあって、高齢の親と子どもが一緒に家にいる時間が増えたことによって、不仲になってしまったり、もともと仲が悪かったのがもっと悪化したり、というご家族が現在とても増えています。

認知症や精神疾患を高齢者の方やそのご家族が患っていて、地域包括支援センターが介入していかないと、虐待や適切ではない介護をしてしまう、という事態に発展してしまうのです。

地域包括支援センター、ケアマネジャー、ヘルパーさんなどが、なんとかして支援できるきっかけをつくることをしていかないと、生活がどんどん孤立化、悪化に向かっていくケースが現実問題として増えています。

高齢者の方やご家族に対して、公的な支援につなげようとする作業、自立支援の視点だったり、孤立させない働きかけなどには、相当な専門性が必要です。

それが専門に学んできていない人、ボランティアさんなど、誰にでもできますか?と声を大にして言いたいですし、実際行政に掛け合ったこともあります。

また、別の無理解、誤った認識もあります。2つ目としてお話します。

それは、「簡単な支援だから低額で担ってもらおう」という、この「低額で」という部分です。こちらも全くもって「ざけんじゃねーよ!(心の声)」です。

現在のヘルパーさんの有効求人倍率がいくつかご存知ですか?約15倍になっています。

総合事業に移行したら今よりもさらに事業所の収入が減ります。するとヘルパーさんの給料も上がりません。

当然今まで以上に人材が入ってきません。そして、今がむしゃらに働いてくれているヘルパーさんたちも、いい加減嫌になって辞めていくでしょう。

破綻の一途を辿っています。総合事業に移行して、事業所がこれまで以上に減収になれば、輪をかけて人が集まらなくなるという悪循環に陥ることは目に見えています。

先程お話ししたような、支援に専門性が必要な、繊細な訪問介護、他人が家に入ってきて行う仕事をさらに安い賃金にして、一体誰がやってくれるのでしょう。まさにお偉いさんの考えそうなことです。現実問題、総合事業の担い手がいないということをわかってないです。「サービスはあるのに、人が足りなくて派遣できない」というのが実情です。

また、以前私がそれを行政に言ったことがあったのですが、その返答に呆れてしまいました。「それを生み出し育てるのも、地域包括支援センターとか現場の仕事ではないのか?」というものでした。

すでに、お困りごとが雪だるま状態になっている方々に毎日会い、支援をしている地域包括支援センターの職員やケアマネジャーやヘルパーたちに、人探しまで切り盛りしろと責任を押し付けてくる・・・愕然としてしまいました。

ちょっと話がそれました。2つ目の誤った認識、無理解は、「簡単な支援だから低額で担ってもらおう」というものでした。

今回お話した内容は、「要介護2以下の訪問介護、通所介護を相互事業に移行」という提言について、訪問介護の生活支援の観点でしたが、デイサービスにも影響が及ぶ可能性は大いにあります。

今年2022年の年末には、2024年度の介護保険制度改正の大枠が決まります。今後もどのような議論が行われるのか注目していきたいと思っています。』

以上、「訪問介護を通所介護総合事業に移行しようという提言が、財政審議会から政府に提出された」というニュースを受けて、地域包括支援センター長のTさんからお聞きしたお話でした。

Tさんのお話を聴いて、更に暗澹たる気持ちになってしまいましたが、今筆者にできるのは、少しでも現場の声をすくい上げて微力でもこうして記事にしていくことだと感じました。

今後も追って2024年の介護保険制度改正については注視していきたいと思います。

読んでいただき、ありがとうございました。それではまた!

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