なぜ特養が経営破綻に?背景にある制度と構造的な問題を解説【前編】
こんにちは。大阪介護転職ネットです。
高齢化が進み、介護施設の需要がますます高まるなか、とくに入居待ちが出るほど人気の高い特別養護老人ホーム(特養)は、「安定した経営」の代表格と見られがちです。
しかし近年、そんな特養が経営危機や、場合によっては倒産にまで追い込まれるケースが出てきているのをご存じでしょうか。
本記事では、特養でいま何が起きているのか、その経営の現状と背景にある主な原因について、わかりやすく解説していきます。
ぜひ最後までご覧ください。
増える倒産、介護業界の現実
特別養護老人ホーム(特養)は、「社会福祉法人が運営しているから経営が安定している」「高齢化が進んでいるため需要が高く、倒産しにくい」といったイメージを持たれることが少なくありません。
また、民間の介護施設に比べて国や自治体からの支援も手厚く、経営基盤がしっかりしていると思われがちです。
しかし実際には、こうした“安定経営”のイメージとは裏腹に、経営難に直面する特養も少なくありません。
事実、介護事業全体で見ると、2023年の倒産件数は122件にのぼり、過去最多レベルとなっています。特養に限った件数は明確には示されていないものの、特養を含む施設種別でも倒産や撤退の動きが報告されています。
特養の「倒産」とはなにか
似たような言葉に「廃業」がありますが、両者には明確な違いがあります。
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廃業:経営者の高齢や後継者不在など私的な理由により、自主的に事業を終了すること。必ずしも赤字や資金難が原因とは限りません。
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倒産:資金繰りが行き詰まり、債務の支払いができなくなることで事業の継続が困難になる状態。明確な経営破綻を意味します。
簡単に整理すると、
倒産=経営破綻による撤退
廃業=自主的な撤退
となります。
つまり、特養における「倒産」とは、運営法人が経済的に立ち行かなくなり、施設の運営を継続できなくなることを指します。
倒産件数だけでも相当数に上っていることを踏まえると、廃業も含めれば、さらに多くの事業者が介護の現場から撤退していると考えられます。
特養の経営構造とその限界
特別養護老人ホーム(特養)の運営には、国が定めた人員配置基準が義務付けられており、一定数の介護職員や看護職員を確保する必要があります。
これは介護サービスの質を保つために重要な仕組みですが、人件費が高騰しやすい要因でもあります。
さらに、特養の主な収入源は介護保険による介護報酬に限られており、施設が独自に価格設定をして収益を上げることはできません。収入の内訳は以下の通りです。
約90%:国や自治体による公費負担
約10%:利用者負担(所得に応じて1〜3割)
つまり、公定価格の枠内で運営せざるを得ないうえ、近年上昇が続く人件費や光熱費などのコストを自由に価格転嫁することができないという、構造的な制約を抱えています。
高齢化と介護ニーズの拡大
一方で、介護の需要は年々増加しています。
総務省の推計(2024年時点)によると、
65歳以上の高齢者人口は約3,678万人(総人口の29.1%)
75歳以上の後期高齢者は約1,961万人(全体の15.5%)
このように高齢化が進み、介護サービスのニーズは確実に高まっているにもかかわらず、施設側は上昇するコストに対応できず「需要の増加」と「経営の不安定さ」が並存する深刻な矛盾を抱えています。
たとえば、全国老人福祉施設協議会(全老施協)の調査によれば、2022年度における特養の約6割(58.8%)が赤字であると報告されています(※1)。
また、帝国データバンクの集計によると、2023年には「老人福祉・介護事業」に分類される事業所の倒産件数が122件に達し、これは統計開始以来過去最多を記録しました(※2)。
この数字には特養に限らず、訪問介護や通所介護など幅広い事業が含まれていますが、特養もその一部として経営的な影響を受けていることは間違いありません。
※1:全国老人福祉施設協議会(全老施協)「2022年度 特別養護老人ホームの経営実態調査」
※2:東京商工リサーチ「2023年 介護事業者の倒産動向」
※3:総務省統計局「令和6年版 高齢社会白書(2024年)」
今回のまとめ
以上のように、介護ニーズが高まる一方で、特養を取り巻く経営環境は年々厳しさを増しており、安定経営とは言いがたい実態が浮かび上がっています。
次回は、経営危機を引き起こしている具体的な要因について、さらに詳しく掘り下げていきたいと思います。

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