『介護と宇宙と災害』3つに共通する大切な事とは?

2021.08.02掲載
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皆さん、食べることは好きですか? 世界には美味しいものがたくさんあって、現代の私たちは、食べたいときに好きなものを食べることができる、恵まれた環境にありますね。しかし、当たり前のように思えるこの状況が、人や場所によっては、そうはいかない場合があります。

高齢者や宇宙飛行士、災害時の状況におかれた人たちなどがそうで、好きな時に好きなものを好きなだけ食べる、というわけにはいきません。この介護と宇宙と災害と、一見関係のなさそうな3つの「食」には、密接なつながりがありました。

介護食に求められる要素としてよく挙げられるのが、簡単に噛める、歯茎や舌で潰せる、飲み込みやすい、などですが、最も大切なのは、必要な栄養がきちんと摂れるかどうかです。

高齢になると食が細くなり、どうしても栄養不足になりがちですね。特にカルシウム、タンパク質、ビタミン類、食物繊維などが不足しがちで、手作りの料理に加えて、これらの栄養素を強化した加工食品などを用いる介護施設が増えています。簡単便利に用意ができて、味も美味しいものが多く、介護食の研究開発の賜物だと思います。

宇宙食にも介護食に通じるものがあります。宇宙飛行士が無重力の宇宙で過ごすと、体液の移動や減少で顔がむくんだり、足が細くなったり、貧血になったり、さらには地球の1Gの重力で生活するのに必要な丈夫な骨が不要になるので、カルシウムがどんどん流出し、骨がもろくなり、筋力も弱くなります。これらを防ぐのに、宇宙飛行士たちは宇宙で過ごす間、毎日欠かさず筋力トレーニングなどいろいろな運動をします。

そして肝心の食事ですが、新鮮な野菜や果物、パンなどの他に、栄養が強化された宇宙食も持参します。宇宙食も簡単便利なものが多く、温めるだけとか、お湯で戻すだけとか、そのままでも美味しく食べられるものなど、いろいろな工夫がされています。

次に、介護食や宇宙食と同じ要素の「食」が求められるもう一つの状況、災害が起こった時です。

日本ではこのところ、毎年のように大雨や台風、地震などの災害に苦しめられています。筆者が住むすぐ隣の地域でも2015年の大雨で河川が氾濫し、大規模な被害を受けたことがあります。ボランティアで現地へ行きましたが、その時に何よりも水と食べ物は不可欠で、必要な人たちに手間なくすぐに食べられる栄養のあるものを、できるだけ早く届けなければならないということを痛感しました。

被災地では、しばらくの間不便で制約のある生活を強いられ、ストレスが多くなります。そんな中求められる食事も、介護食や宇宙食と同様に、簡単で美味しく、すぐに提供できて、少しでも元気が出るようなものが良いですよね。どれも全部長期保存ができて、備蓄にも適していますね。

栄養価が高く、食べやすく、長期保存が可能で美味しい!・・・これらは、介護時、宇宙滞在時、災害時に必要不可欠な「食」の要素で、そろえば完璧に思えますが、忘れてはならないことがもうひとつあります。それは、「見た目」です。

それぞれの「食」の研究が始まったころは、まず、食べやすさだったり、持ち運びやすさだったり、長期保存といったことに重点がおかれ研究が進んでいきました。実際に食べる人のことや、食べ続けた時のことが二の次になっていました。チューブに入ったものを飲むだけ、とか、タブレットひとつ舐めるだけとか、乾いたビスケットと水だけ、という食事だけで済むこともある意味素晴らしいのですが、それを続けていくと、精神面での悪影響が顕著に出てくるそうです。

食べるという行為には、味はもちろん「見る」こともとても重要なんですね。現在では、「柔らかいけれど見た目は普通の魚」、というように形を変えずに提供できるようにすることの研究が進んでいます。

そして、介護食を災害時に被災地に回したり、宇宙へ持っていけるように、パッケージを万が一の火災で燃えても有害物質が出ないような素材にするなど、どのシチュエーションでも臨機応変に利用できるような開発が急速に進んでいるそうです。コスト面などでの課題はまだありますが、とても頼もしいニュースだと思いました。

これは余談ですが、筆者はもう何年も前にJAXA(宇宙航空研究開発機構)を見学したことがあります。

帰り際、売店でお土産用に宇宙食を買いました。当時一番売れているという、宇宙バニラアイスと宇宙カレーを買いました。

カレーは普通のレトルトと変わりなく、美味しく食べましたが、バニラアイスはフリーズドライで、ミルクの粉をギューッと固めたような、薄いプレート状のものでした。

不味くはなかったですが、とにかく甘かった・・・。現在はもっといろいろな種類が売られているようです。