医師も知らなかった!介護職員ができる痰吸引の詳細と実態を解説

2023.09.25掲載
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こんにちは。大阪介護転職ネットです。

 

先日、ネットでこんなお話を見つけました。

「ある日の夜勤中、痰で苦しそうにしている利用者さんがいました。痰吸引について、私は実務者研修で最近勉強をしたばかりだったので、自分ではできないと判断をし、医師を呼びました。

するとその医師は、『目の前で苦しんでいる人が居て、資格を持っているのになぜできないんだ!』と言いました。私は介護福祉士の資格もまだ取得をしていませんし、医療行為を行うのは怖くて断りました。」

というような内容です。

つまり、実務者研修の資格を所持しているのになぜ痰吸引をしないのか、ということを医師は言いたいのでしょう。物の言い方についてはさて置き、結論から申し上げますと、法律上この方は痰吸引ができません。(※理由については後ほど詳しく説明)

そして、この事例には他にもいくつか間違いがあり、介護職員が行う痰吸引の背景には複雑な実態がありました今回はその実態と、医療従事者以外の方が現場で痰吸引を実施できるのはどのような状況なのか、ということについて詳しくお伝えしていきたいと思います。

 

 

 

喀痰吸引は、専用のチューブを使って気管に入り込んだ異物を取り出す医療行為となりますが、「社会福祉士及び介護福祉士法」の一部改正により「実務者研修」の修了が義務付けられ、並びに、平成24年4月から一定の条件の下であれば、介護職員でも痰吸引の実施が可能となりました。

しかし、医療従事者以外の方が現場で痰吸引をできるに至るまでは、複数の条件を満たさなければいけません。その条件として、まず最初に、大きく分けて二つの要因があります。

 

1.就業先の事業者が〝登録喀痰吸引等事業者〟の登録を受けていること

2.介護職員が痰吸引等研修修了し、認定を受けていること

 

つまり、介護職員が痰吸引の研修を受けて資格を取得していたとしても、全ての介護施設で行えるという訳では無いのです。冒頭でお話をした事例では、その介護施設はそもそも「登録喀痰吸引等事業者」の登録をしていない施設だったらしく、どちらにせよ痰吸引は不可能でした。

そして、痰吸引等研修についても少し誤解をされている方が多いと思うので、さらに詳しく説明していきます。

 

◇痰吸引等研修とは◇

痰吸引等研修には種類があり、1号・2号・3号と分かれています。違いを簡単に説明すると、3号は、特定の方に行うもの。1号・2号は、介護施設などで吸引が必要な方に対して、不特定多数に向けてできるもの、となっております。恐らく介護職員がスキルアップとして必要になるのは、後者の1号・2号です。

 

研修の内容は、それぞれ基本研修実地研修があります。基本研修では、喀痰吸引や経管栄養などの医療行為に関する知識を座学で受けたり、演習として人形でシミュレーションを行ったりします。

基本研修(講義50時間+演習各5回以上)

実地研修(口腔内吸引10回以上、胃ろうや鼻など各20回以上)

 

補足をすると、法律の一部改正により義務化をされた実務者研修のカリキュラムにて、“医療ケア”という項目が追加されました。ですから、実務者研修を修了した方や介護福祉士を取得している方は、この基本研修を既に終えています。

※平成28年以前に介護福祉士を取得された方は、改正前のため基本研修は受けていません(→ちなみに私がこれに該当します)

 

しかし、基本研修だけでは現場で実施をする事が出来ないので、資格を取得後、改めて実地研修を受けなければいけません。実地研修というのは、看護師の指示の下、実際の利用者さんに対して吸引を行っていくことです。

そして、この看護師というのも、資格を持っていれば誰でもいいという訳では無く、介護職員に向けて痰吸引の講師ができる研修をきちんと受けた看護師でなければいけません。医療行為というだけあって、体制も強化されているのがよく分かりますよね。

 

 

これらを踏まえた上で、みなさんにお伝えをしたいことがもう一点。

実際に喀痰吸引等研修を修了された方はご存じだと思いますが、今回ご説明をした介護職員が実施できる痰吸引は、実は、看護師が行う痰吸引とは少し違うのです。

 

どういうことかと言うと、例えば、介護職員ができる口腔内の吸引というのは喉ぼとけまでで、それ以降は看護師でなければ出来ません。また、吸引ができる圧力が20kPa(キロパスカル)までだったり、チューブの長さは10㎝までだったりと、他にも色々決められています。

同じ医療行為ではありますが、介護職員が行う喀痰吸引では、範囲や数値などある一定の制限が掛かっているということです。

 

✱ ✱ ✱

 

最初に話した事例に戻りますが、中には、この情報を知らない方もいるのではないでしょうか。介護福祉士はみんな痰吸引や経管栄養ができる。と勘違いをしていると、思わぬ事故に繋がったり、トラブルが起こったりしてしまうかも知れません。

そして、制限がある限り、頻繁に痰吸引が必要な利用者さんへの対応など、介護職員が日常的に行うことは難しい、ということも問題点として挙げられます。これが、介護職員が行う痰吸引の複雑な実態です。ただし、研修は介護職員であれば誰でも受講が可能です。これを機にスキルアップを目指して、ぜひ一度「喀痰吸引等研修」を受けてみてはいかがでしょうか。

 

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