『クロストリジオイデス・ディフィシル』を知っていますか?①
はじめに
筆者は、以前から介護職の皆さんの「健康」についての記事を書きたいと考えていました。勤務先の法人や施設によって、福利厚生に健康診断があったりなかったりすること、また、介護職ならではのストレスによる心身への影響などについて調べを進めていました。
筆者自身、身体の不調を今年の3月頃から感じていたこともあり、自分自身の健康問題にも関心があったからです。
今回は、そんな中ある日、急激な体調の悪化により総合病院への入院を余儀なくされた筆者の体験談をお話したいと思います。
※体験談の中には、病院や病気に関しての記述、また、病気による症状の描写が多数出てきます。閲覧される場合は、十分なご注意をお願い申し上げます。
こんにちは。大阪介護転職ネットです!
皆さんは「クロストリジオイデス(以前はクロストリジウム)・ディフィシル」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。感染症の対策などをしっかりする必要がある介護職の皆さんの中には、ご存じの方も多いかと思います。「クロストリジオイデス(以前はクロストリジウム)・ディフィシル」とは、「細菌」の名前です。
参照URL
フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
MSDマニュアル家庭版:嫌気性細菌
この「クロストリジオイデス(以前はクロストリジウム)・ディフィシル」は、健常者の腸内に少数生息している細菌で、保菌していること自体は珍しくもなんともない腸内細菌のひとつです。
筆者の腸内にも生息していたようで、今回、この細菌が筆者の体の中で異常に増え、偽膜性大腸炎を引き起こし、総合病院への入院を余儀なくされた体験をお話したいと思います。
筆者はそれまで大きな病気や怪我などをしたことがなく、入院という経験もしたことがありませんでした(出産時を除きます)。インフルエンザに感染し、近所のクリニックへ行くことはありましたが、風邪をひいてもほとんど医者にかかるようなことはなく、健康には(根拠のない)自信がありました。
今年の3月中旬のある日のことです。朝起きて何となく寒気がし、胃の周辺が痛いな、と感じたのを覚えています。なんだかお腹の調子も悪く、やや下痢気味といった自覚症状もありました。
(もしかして、新型コロナウイルスに感染したのかも!)
とその時とっさに思ったのですが、なぜなら、筆者の夫の職場で新型コロナウイルスの濃厚接触者が出たということを、その数日前に夫から聞いていたからです。
(これはもしやコロナか?でものどの痛みや咳などの症状はないな、何より肝心の夫にそれらしき症状がない、それに、基本引きこもりで自宅で仕事をしている自分が感染するとは思えない、ま、大丈夫だろう)
などと、その時はのんきに構えていました。
いつも通り夫を会社へ送り出し、掃除などの家事を済ませたものの、時間が経つにつれ寒気と下痢がだんだんと酷くなっていき、熱を測ると38.5度になっていました。普段風邪をひいたりしてもほとんど高い熱が出ることのない筆者は、この数字にビビってしまい、起きていられる状態ではなくなってしまいました。布団にもぐりこんでその日はそれ以上何もせず寝て過ごそうと、家にある市販の解熱鎮痛剤などを飲んで寝ていることに決めました。
その後も、症状はいっこうに良くならず、時間と共に下痢は悪化、吐き気もしてきました。夫には「具合が悪い、夕飯の準備ができない」等の連絡をし、帰りにOS-1やアイス、ゼリーなどを買ってきてほしいと頼み、ひたすら高熱と下痢、吐き気に対処していました。その日の夜はアイスなどを食べても胃が受け付けず、すべて嘔吐してしまい、下痢も酷くなる一方でした。
翌朝、新型コロナウイルス感染の疑いがぬぐい切れないので、最寄りの発熱外来へ電話をし、丁度予約枠に空きがあり、夫と共に受診することができました。
PCR検査の判定はふたりとも陰性で、幸いウイルスには感染していませんでした(検査は100%感染していないことを証明するものではないとの説明はありました)。
新型コロナウイルスに感染していなかったので一安心でしたが、そうすると筆者のこの症状は何が原因なのか。
(夫と同じものを食べたり飲んだりしているので食中毒などは考えにくい、あ、でも最近お昼は卵かけご飯ばかり食べていたな・・・)
など、いろいろ頭に浮かびましたが、体がしんどいのでそれ以上何かを考えることがつらく、筆者を自宅に届けた後、夫はそのまま会社へ向かったこともあり、その後は寝ていることにしました。
内科胃腸科を受診することも考えましたが、その時はとてもそのような気力が起きず、結局、4,5日寝込み、その後も1週間ほどは寝たり起きたりを繰り返しました。食事をまともに摂れなかったので、体力がかなり落ちてしまっていたのです。
夫からは様子を見てクリニックへ行くように言われていましたが、とにかく外出する気力が起きず、そうしているうちに症状が落ち着いてきて、食べたいものも食べられるようになり体力も回復してきたので、結局クリニックへは行かずじまいでした。これが良くなかったのかもしれません。その後、同じ症状を繰り返すことになるのです。
4月の上旬と下旬にまた腹痛、発熱、下痢の症状が出ました。しかし、3月に経験した症状ほど酷くはなく、下痢は軽いもので嘔吐はなかったことと、一晩寝たら熱が下がっていたので内科胃腸科へは行かなくても大丈夫だろうと高を括っていたのです。
それからしばらく経った5月下旬のある日のことです。天気の良い金曜日でした。布団干しなど家事を張り切って行っている最中に、またも嫌な感じがしてきました。寒気がし、熱が高くなっていることは容易に察しがつきました。体温を測ってみると、38度で、
(うわ~まただ、今度こそクリニックへ行かなきゃ)
と思ったのですが、新型コロナウイルス感染の可能性を否定しきれないので、まずは発熱外来を受診すべきだろうと考え、電話で確認したところ予約がいっぱいで、とりあえず自宅で待機するよう指示がありました。
その後、40度近くまで熱が上がり、吐き気と下痢が3月と4月の時とは比べものにならないほど酷くなっていきました。また、腹痛も酷く、上腹部がパンパンに張っていて、お腹の中で何かが燃え上がっているような感じがしていました。起きているのもままならない状況で、大変苦しかったのですが、クリニックへ行くのは発熱外来を受診してからという考えがあったので、寝てやり過ごそうと思い、横になって痛みや吐き気などに耐えていました。
翌土曜日の朝、熱は平熱まで下がっていたので、夫の付き添いで近所の内科胃腸科クリニックへ行くことにしました。
血液検査をし、整腸剤を処方され、医師からは月曜日に血液検査の結果を聞きに来てくださいと言われ、その日は帰宅しました。
しかし、帰宅後、また熱がどんどん高くなっていき、腹痛、嘔吐、下痢の症状もさらに酷くなっていきました。翌日曜日も同様でしたが
(明日の月曜日に血液検査の結果を聞きに行ったときに診てもらおう、とりあえず寝ていれば良くなるだろう)
と横になってひたすら耐えていました。
翌月曜日の早朝、血液検査の結果を聞きにクリニックへ行く予定でしたが、筆者の様子を見た夫は、ためらわず救急車を呼びました。後から聞いたのですが、筆者の様子から夫は、「このままでは妻は死んでしまう」と思ったそうです。
救急車が到着し、搬送先の病院はすぐに決まりました。夫は車で後からついてくることになりました。
救急車に乗った筆者は、
(果たして救急車を呼んでも良い案件だったのだろうか)
とか、
(ご近所さんに見られて恥ずかしいな)
ということを考えていた一方で、これでこの痛みや吐き気などの苦しさから解放されるだろうと思い、思わず涙がこぼれました。それに気づいた救急隊員さんが、「病院まですぐですからね、大丈夫ですよ。」と声をかけてくださり、それを聞いた筆者の目からは、ますます涙がこぼれたのでした。
②へ続く