『介護の歴史』

2022.01.10掲載
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お役立ち情報

人は誰でも生まれたその瞬間から、老いに向かって突き進み始めます。それは誰にも避けられないことであり、「老いるために生まれる」、「死に向かって生きる」と表現する人もいます。

また、人は誰しも、人生で何度か他人の助けが必要になる時があります。生まれたばかりの赤ちゃんの時や幼少期、高齢になった時、またその間に、怪我や病気になった時などがそうですね。

これらの「介護」や「看護」は、それを職業にしている人たちはもちろんですが、小さい子の手をつないだり、お年寄りの荷物を持ってあげたり、痛いところをさすってあげたりなど、普通の人たちも普段なにげなく行っていることでもあります。人類が生きてきた年数と同じくらい、介護にも長い歴史があると言える所以です。

現在の介護のあり方が、馴染み深く当たり前で、普通のことと思っている人も多いのではないでしょうか。最初から今の制度や仕組みが確立していたわけでは当然なく、介護の世界には、今日まで歩んできた歴史があったからこそ、現在の介護業界が成り立っていると言えるでしょう。今回はそんな介護の歴史を振り返ってみたいと思います。

介護と言えば、まず頭に浮かぶのが高齢者ではないでしょうか。高齢者=老人、昔の老人たちは、現在では考えられない過酷な状況に置かれていたのでは?、と推察できるお話があります。

皆さん、『姥捨て山』という昔話を一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。その民間伝承の話に着想を得て書かれた小説が、深沢七郎の短編小説、『楢山節考』です。1958年と1983年の2度、映画化されています。貧しい山村に住む村人たちは、70歳の老人になると「口減らし」の因習に従わなければならず、山に捨てられるというお話です。

・・・なんともまあ、残酷なお話です。年寄りは穀つぶしで、役立たずという存在であり、たとえ親を捨てるのが辛くて嫌だと思っていても、介護の「か」の字もなかった時代です、同調圧力でそれに異議を唱えることのできる人などいなかったのでしょう。
最近では、2019年公開の『ミッドサマー』という映画に、『姥捨て山』を連想させるシーンがあり、現代社会の中にも、もしかしたら映画の中に出てきたような忌まわしい因習が残っているコミュニティや村があるのでは・・・と背筋が寒くなるようなストーリーでした。

およそ介護とは無縁だった15世紀ごろに、高齢者サービスなど当然あるわけがなく、つい最近の20世紀を見ても、お世辞にも高齢者サービスは良いものとは言えなかったようです。

社会福祉の土台ができ始めたのは、戦後になってからです。それ以前の日本は、国自体が貧しく、制度と呼べるものはありませんでしたし、高齢者の介護は家族が行うのが当然という時代でした。

戦後の高度経済成長期に、ようやく社会福祉の制度が段階的に整備されていくことになります。1963年創設の「老人福祉制度」と1982年創設の「老人保健制度」が高齢者サービス制度の礎と言える制度です。

しかし、「老人福祉制度」は、「措置制度」と言われており、介護の必要性や利用できるサービスは行政が決めていました。肝心の利用者や家族にとっては、縛りが多く利用しにくい制度だったのです。

もうひとつの「老人福祉制度」は、対象が低所得者のみだったため、低所得者以外の家庭では、制度の利用はかないませんでした。

要するに、ほとんどの高齢者は、その家族により家庭で介護されていたことになります。当時はそういった状況から、様々な問題が生じました。介護をする人たちのストレスが原因の、高齢者虐待などがそうで、介護するほうもされるほうも辛い、「介護地獄」などという言葉が生まれた時代でした。制度が未熟だったために、このような不愉快な言葉が生まれてしまったのです。

 

★現代の介護

それから時代は21世紀へと移り、介護の世界にも変化が訪れます。

2000年の4月に施行された「介護保険法」は、介護の状況を少しでも良くしよう、高齢者の介護を国や社会全体で支えよう、という目的のために創設された制度です。

今までよりも格段に、介護サービスを必要とする高齢者やその家族がサポートを受けやすくなりました。それまで行政が決定していた、介護が必要か否かの判断やサービスの種類を、介護サービスを必要としている利用者や家族などの当事者が、事業者を選べるようになりました。

医療と福祉の申請手続きなども、別々に行わなければならないなど煩雑で分かりにくい欠点がありましたが、この「介護保険法」の施行以降は、ケアプランという利用計画を作成してもらい、医療、福祉両方のサービスをいっぺんに利用することができるようになりました。画期的な制度と言えますね。


★介護の未来

日本は、2050年には超高齢者社会を迎えます。先に書いた2000年よりも前の、まだまだ不備が多かった高齢者サービス制度の悪いイメージが未だ根強く残っており、介護の業界にネガティブな先入観を持っている人が多いことが問題になっています。人材を確保する上での、大きなネックのひとつです。

ですが、これからの時代は今以上に「介護」が必要になるのは間違いのないことです。日本は今後、高齢者サービスや医療などの福祉関連で、諸外国を一歩も二歩もリードできる大きなチャンスを目の前にしています。介護の世界に携わるのは、とても有利な選択と言えるのではないでしょうか。


★まとめ

介護の歴史は人類の歴史と共に、これからも脈々と続いていきます。
介護職に携わる人たち、そしてそれ以外の人たちにも密接な関係があることです。明るい未来が待っているのか、暗黒の時代がやってくるのかは、現代の私たち全員にかかっていると言っても過言ではないでしょう。

私たちはもちろん、私たちの未来の子どもたちや孫たちが笑顔で生きていくためにも、一人ひとり全ての人が、介護を自分に関係することとして捉え、過去から未来へと繋がっていく介護の歴史を見つめることが必要な時代に突入している、と筆者は思うのです。